「人生って思ってたより大変」
この映画を観ているとふと、そんなことを思いました。
10代の時は、大人になるにつれてだんだんと生きていくのが楽になっていくものだと思っていたけれど、どうやら違うみたい。
ひとつの困難を乗り越えたら、また新しい困難。
この繰り返し。
まわりの人たちはもう少し楽に生きているように見えるけど、そんなことはないのかな。
あぁ、人生って思ってたより大変。
だけどそれを乗り越えるのではなく、受け入れる。
「人生ってこんなもの」と腹をくくる。
すると少しだけ心が軽くなる。
そんな映画です。
PMS(月経前症候群)で月に1回イライラが抑えられない藤沢さんと、パニック障害に悩む同僚の山添くん。
それぞれの生きづらさを抱えながら、友達でも恋人でもないふたりの日常を描いた映画。
この映画、何といっても上白石萌音が演じる藤沢さんのキャラが良いです。
普段は礼儀ただしく丁寧。
妙におせっかいで、行動力がある一面も。
序盤なんかは明らかに山添くんは藤沢さんのことを避けているのに、意に介している様子もなくグイグイいくので、観ているこっちがハラハラしてしまいます。
そしてPMSの症状がでると、イライラが爆発。
それはもう大爆発。
普段とのギャップがあるから余計にこわい。
相手が何を言っても食ってかかる。
まさに理不尽。
世の理が通用しない。
でも、本人はどこか前向き。
「自分はこんな病気なんだから、ジタバタしても仕方ない」という潔さを感じます。
その姿になんだか元気がもらえるのです。
一方、パニック障害が発症して2年の山添くん。
電車に乗れなくなって、働いてきた会社(たぶん大きな会社)も休職して、藤沢さんの職場に転職してきました。
自暴自棄になって無気力な山添くん。
そこに藤沢さんがズカズカとやってきて、なんやかんやとおせっかいを焼き始める。
PMSとパニック障害。
病気は違うけど生きづらさをかかえる者同士、藤沢さんは山添くんの気持ちがなんとなくわかる。(それも最初は山添くんに否定されるけど)
藤沢さんは、病気の先輩として山添くんを放ってはおけないのです。
そしてだんだんと助け合うようになるふたり。
いや、「助け合う」というほど立派でも重いものでもないかもしれない。
「ハンカチ落としましたよ」ぐらいの感覚で、お互いをちょっと気にする関係。
その過程で、山添くんの表情はどんどん良くなっていく。
笑顔が増えて、おいしいものを「おいしい」と言えるようになってくる。
絶対に病気を克服する!という気持ちが和らぎ、肩の力が抜けたように感じます。
目の前にある障害を乗り越えるのではなく、まわりの助けを借りながら、うまくやり過ごせるようになったのだと思います。
そして、距離は近づくけれど決して友達や恋愛関係にはならない藤沢さんと山添くん。
だから「大切な存在」だけど「絶対いなくてはいけない存在」にはならない。
山添くんは、たぶんもう大丈夫。
そのきっかけを作ってくれたのは間違いなく藤沢さん。
だから『出会うことができて、よかった』。
良い映画でした。
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