軽度の知的障害のある女性がアルバイト先の上司に恋をして、少しずつ成長していく物語。
有紗(ありさ)は軽度の知的障害をもつ25歳の女性。
自分は役に立たない人間だと感じており、男性から体を求められたら断ることができません。
その有紗が、新しく働き始めたのが配送会社。
「障害者枠」は給料が安いから、自分に障害があることは隠しています。
そんな有紗に仕事を教えるのが、同じ配送会社の社員である岡村さん。
少し物覚えが悪いけど、一生懸命仕事を覚えようとする有紗に少しずつ惹かれていきます。
この漫画を読んで「あぁそうか」と思ったのが、社会には知的障害を隠して生活している人がいるのだな、ということです。
今まで私は、知的障害を持つ方が私たちと同じ環境で働いている、という現実を考えたことがありませんでした。
知的障害を持つ方たちは、専門的な作業所や一般企業の「障害者枠」で働いていると思っていたのです。
存在は認識しているのに「自分とは無関係の人」として扱うのはれっきとした差別だよなと自己嫌悪。
有紗は、あえて言わなければ障害者とはわからないレベルの知的障害。
確かに、本人からすれば一生懸命働いているのに自分だけ給料が低いのは嫌だよなぁ。
障害のある方の中には、有紗のように真面目だけど中々仕事を覚えられない、想定外の出来事に対応できない‥といった方がいるようです。
それを考えると、私の人生の中にも「もしかしたらあの人も」と思う方はいます。
当時の私は、まさにこの物語の職場の人と同様「これぐらい普通はわかるでしょ」と内心思っていました。
仮に、最初に障害がある方だと言われていれば、もう少し丁寧に対応をしていたのだと思います。
しかし、そのように対応を分けること自体に差別の芽があります。
本来は障害者かどうかは関係なく、その人に寄り添った方法で教えればよいのです。
「普通ならこの程度はわかるはず」「障害者なら仕方ない」
そういった気持ちが、確かに私の中にもあったのだと思います。
‥と少し重い感じになってしまいましたが、この漫画はゴリゴリの社会派漫画ではありません。
有紗という女の子が恋をして成長していく、だれもが共感できる普遍的な恋愛漫画だと思います。
昔から普通に憧れている有紗と、ずっと社会の枠からはみ出さず普通に生きてきた岡村。
そんなバランスがよいのか悪いのかわからない二人が、社会の片隅でひっそりと幸せに暮らしている。
障害の有無や周りの目は関係ない。
ただお互い好きだから一緒にいる。
幸せって実はすごくシンプルなのかもしれない、と思いました。
ではでは。
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